
この記事では「白内障の治療法」について、費用や期間も含めて詳しくご紹介します。
白内障の治療法は、進行段階によって異なり、初期段階では点眼治療などを行います。症状が進行した場合には、外科手術が必要です。
近年、白内障の初期段階において、「ストレスフリー療法」という温熱療法が注目されており、健やかな目の状態を保つサポートが期待されています。
この記事では、白内障の治療方法ごとの特徴や治療費用、治療期間、治療しないとどうなるか、などを解説します。
白内障と診断されて治療法を探している方や、ご家族・ご友人が白内障の方にも、ぜひ読んでいただきたい内容です。
白内障の治療方法〜初期段階〜

白内障の「初期段階」、すなわち目のかすみや視力低下などの症状が日常生活に支障がないレベルの場合は、手術は行いません。「点眼薬(目薬)による治療」が基本となります。
ただし、点眼薬治療により水晶体の濁りが改善するわけではなく、あくまで白内障の進行を抑えることが目的です。
また、初期段階では、温熱療法の一種である「ストレスフリー療法」が、目の健康をサポートする手段の一つとして注目されています。
点眼薬(目薬)による治療
まずは、一般的な治療法である「点眼薬(目薬)による治療」について解説します。
使用される点眼薬は、主に「ピレノキシン製剤」と「グルタチオン製剤」の2種類です。
どちらの製剤も、水晶体の混濁を防ぎ、透明度を保持する効果があるとされています。
ピレノキシン製剤
白内障の発生メカニズムとして提唱されている学説のうち、「キノイド説」に基づいて開発された点眼薬です。
特定のアミノ酸の代謝異常で「キノイド物質」が生成され、これが水晶体の水溶性タンパク質「クリスタリン」を変性させることが白内障の原因とされています。
ピレノキシンはキノイド物質のクリスタリンへの結合を競合的に阻害し、水晶体の白濁を防ぐことで白内障の進行を抑制すると考えられています。
このピレノキシンが含まれるのが、ピレノキシン製剤です。医師の指示に従い1日3〜5回点眼します。
グルタチオン製剤
白内障の発生メカニズムとして提唱されている学説のうち、「酸化説」に基づいて開発された点眼薬です。
加齢や白内障の進行により、水晶体内の抗酸化物質である「グルタチオン」が減少します。それにより、酸化されて生じた不溶性タンパク質が増加することが白内障の原因であるとされています。
グルタチオン製剤は、減少したグルタチオンを補い、水晶体の白濁を防ぐことで白内障の進行を抑制すると考えられています。医師の指示に従い1日3〜5回点眼します。
ストレスフリー療法
白内障の初期段階では、「ストレスフリー療法」も目の健康維持をサポートする方法の一つとして注目されています。
ストレスフリー療法とは
「ストレスフリー療法」とは、身体のツボに直径3mmの導子をつけ、遠赤外線を30〜60分照射する温熱療法です。
これにより、主に以下の3つの変化が期待されています。
- ストレスホルモン「コルチゾール」の低減
- 血流の大幅な増加
- 腸蠕動運動の活性化
特に、①のコルチゾールの低減により、心身のコンディションを整える働きが期待されています。
コルチゾールの分泌が過剰になることは、心身が強いストレスを受けている状態を示します。それにより、高血圧や糖尿病、白内障、緑内障、骨粗しょう症、不眠症など、加齢によって増える病気のリスクが高まります。
白内障の治療にも期待
最新の研究で、眼底血流を増加させる「若返りのツボ」が発見されました。
このツボは、眉間のツボと左右の眉の上のツボの3点です。ここをストレスフリー器で照射すると、初期段階の白内障や緑内障などの目の疾患に役立つ可能性があることがわかってきました。
白内障の治療方法〜進行後〜

白内障が進行して仕事や生活に支障がみられる場合の治療には、外科的手術が行われます。
具体的には、白濁した水晶体を取り除き、代わりに人工水晶体である「眼内レンズ」を挿入するという方法です。
主に、従来からの「超音波乳化吸引術」と、最新の「レーザー白内障手術」があります。
手術による治療
現在、白内障の手術として一般的に行われているのが、「超音波乳化吸引術」です。
厚生労働省によると、2019年度の国内での白内障手術の実施件数は、「約166万件」で、その大部分が超音波乳化吸引術とされています。
超音波乳化吸引術
この手術では、濁った水晶体を超音波で砕いて取り除き、眼内レンズを挿入します。
手術は、一般的に点眼による「局所麻酔」で行うため、痛みはほとんどありません。手術時間は通常は10〜30分程度です。
まず、2〜3mm程度の切開創から器具を眼の中に挿入し、混濁した水晶体を破砕・吸引します。そして、残した水晶体の薄い膜(水晶体嚢)の中に眼内レンズを挿入・固定します。
現在最も多く使用されるのは、「単焦点眼内レンズ」ですが、より広い範囲にピントが合う「多焦点眼内レンズ」もあります。
レーザー白内障手術
「レーザー白内障手術」は、白内障手術における最新の術式です。
基本的な流れは、超音波乳化吸引術と同じで、「切開」、「水晶体の破砕・吸引」、「眼内レンズの挿入・固定」となります。
レーザー白内障手術では、コンピュータ制御のもとで「角膜切開」・「前嚢切開」・「水晶体核分割」を行います。
この手術のメリットは、
- 「より精密で安全な手術が可能」
- 「合併症のリスクが低い」
- 「多焦点眼内レンズとの相性が良い」
などです。
デメリットは、
- 「自費治療なので費用が高い」
- 「手術中に別室に移動する必要がある」
- 「すべての症例に対応できるわけではない」
などです。
白内障の治療費用はどのくらい?

白内障の治療費用はどのくらいなのでしょうか。
白内障の治療は、
- 「保険適用」
- 「選定療養」
- 「自由診療」
のいずれかです。そのため、治療方法によって自己負担割合や費用が大きく異なります。
ご自身が希望する治療法が保険適用なのかどうか、医師に確認しておきましょう。
点眼薬での治療費用
医師から処方される点眼薬は、「保険適用」です。1〜3割の自己負担となります。
例えば、「ピレノキシン製剤」である以下の点眼薬の薬価は「64.9円/5ml瓶」です。
・ピレノキシン懸濁性点眼液 0.005% 「参天」(参天製薬)
すなわち、眼科で処方してもらい、自己負担割合が3割の場合は、1瓶約「19円」となります。
ただし、点眼薬以外にも、眼科での受診料や検査費用などが必要です。
ストレスフリー療法での治療費用
ストレスフリー療法は「自由診療」で、全額自己負担です。
ストレスフリー療法単体の施術で、1回あたりの費用の目安は以下のとおりです。
・30分…「XXX円程度」
・45分…「XXXX円程度」
後述するように、ストレスフリー療法は、点眼薬による治療と比べて治療期間が短くて済む可能性があり、トータルでは費用が抑えられると考えられます。
すなわち、「コストパフォーマンスに優れた治療法」といえます。
手術での治療費用
手術による治療費用の目安は、超音波乳化吸引術やレーザー白内障手術など、術式によって大きく異なります。
超音波乳化吸引術
① 単焦点眼内レンズ
「保険適用」で、自己負担割合は1〜3割です。
「日帰り手術」の場合、片目あたりの費用の目安は、3割負担で「45,000〜60,000円」程度です。
② 多焦点眼内レンズ
「選定医療」の対象です。
単焦点レンズの手術費用に、「多焦点レンズと単焦点レンズとの差額」と「追加検査費用」を追加で支払うことになります。この追加分は全額自己負担です。
「日帰り手術」の場合、「乱視なし」のレンズで片目あたりの費用の目安は、3割負担で「180,000〜370,000円」程度です。
なお、国内未承認の輸入レンズの場合は、「自由診療」となり、さらに高額となります。
レーザー白内障手術
「自由診療」で、全額自己負担です。
「日帰り手術」の場合、「乱視なし」の「多焦点レンズ」で片目あたりの費用の目安は、「530,000〜850,000円」程度です。
白内障の治療にかかる期間はどのくらい?

① 点眼薬による治療
ピレノキシン製剤については、初期段階の白内障患者(59歳以下)への「18ヶ月」の投与試験で、白内障進行の抑制効果がみられたという研究結果があります。
白内障の進行程度などにもよりますが、効果が現れるまで1年以上の治療期間が必要になる場合もあると考えた方がいいかもしれません。
② ストレスフリー療法
個人差も大きいのですが、多くの方が10回程度の施術で、肩こりや眼精疲労などの効果を実感しています。
白内障のケアを目的として施術を受けて、効果を実感するのにも10回の施術が必要だとした場合、週に1回の施術で「2ヶ月半程度」かかります。また、20回の施術でも「5ヶ月程度」で、頻度によってはより短い期間にすることも可能です。
③ 手術による治療
「超音波乳化吸引術」でも「レーザー白内障手術」でも、手術自体は30分もかかりませんが、視力が回復・安定するまで「1〜3ヶ月程度」かかることがあります。
また、通常は3ヶ月後までは定期的な検診が必要で、点眼薬もそれまで毎日使用しなければなりません。
白内障の治療後(手術後)の注意点

白内障の手術自体は短く日帰りも可能ですが、術後にはいくつかの注意点があります。
手術後には、手術翌日、1週間後、1ヶ月後、3ヶ月後など定期的な検診が必要です。また、3ヶ月程度は点眼が必要となります。自己判断せず医師の指示に従ってください。
手術後、目の表面の傷は数日残ります。そのため、細菌感染の可能性がある洗顔や入浴などを控えたり、ホコリや紫外線などから目を保護したりすることが重要です。
洗顔や入浴など傷口に刺激を与えない
感染症を防ぐため、術後1週間は洗顔や洗髪、入浴を控えてください。
洗顔については、「絞ったタオルで拭く」のは当日からでも構いません。1週間後に洗顔の許可が出ても、目をこすったり圧迫したりしないよう注意して行ってください。
洗髪は、洗顔と同じく1週間後から可能ですが、シャンプーなどが目に入らないように注意しましょう。なお、手術翌日から「美容院での仰向けの洗髪」は可能です。
入浴は、「首から下のシャワー」を浴びるのは当日あるいは翌日から可能ですが、浴槽につかるのは1週間控えましょう。
お酒を控える
お酒については、以下のようなリスクがあるため、術後1週間は控えることが必要です。①と②については、白内障手術に限らず、どの部位の手術にもいえます。
- 傷口の炎症を悪化させるおそれがある
- アルコールは血管を拡張させる作用があるため、傷口から出血しやすくなる
- アルコールにより気分が高まり、眼帯や保護メガネを外して目を触ってしまう可能性がある
なお、タバコについても、煙が目を刺激するので、やはり1週間は控えることが望ましいです。
眼帯や保護メガネはなるべく外さない
手術直後は眼球保護のため「眼帯」を装着します。転倒などのリスクがない限りは、翌日の診察まで眼帯を外さない方が望ましいです。翌日からは「保護メガネ」を使用できます。これは、眼球への接触や細菌の侵入を防ぐだけでなく、風やホコリ、紫外線などの刺激から目を守る役割もあります。
なお、近年は、手術直後から保護メガネを使用する医療機関が増えています。
保護メガネの装着期間は手術後1週間が目安です。就寝時にもかけることで、寝具でのこすれやホコリの侵入を防ぎます。
白内障を治療しないとどうなる?

白内障を治療しないまま放置した場合には、以下のようなリスクが生じる可能性があります。
ぶどう膜炎
症状が進むと、強い痛みや充血などの症状を伴う「水晶体融解性ぶどう膜炎」と呼ばれる炎症を起こすことがあります。重症例では緊急手術が必要です。手術後には、視力が下がるなどの後遺症が残ることがあります。
緑内障発作
症状の進行とともに水晶体が膨らみ、「急性緑内障発作」が起こる可能性もあります。水晶体が膨らむと、眼球内の房水の排出口が狭くなります。これにより、眼圧が上昇して視神経を圧迫し、緑内障発作を起こすのです。
頭痛や目の痛み、吐き気などの症状が生じ、視野欠損や失明にもつながります。欠けた視野は元には戻らず、手術後も生涯にわたり治療を受け続けなければならない場合もあります。
手術の際の度数測定が困難
症状が進むと、眼内レンズを作る際、度数を決めるための「眼軸長」の正確な測定が難しくなります。眼軸長とは、角膜の頂点から網膜までの距離です。
レーザー光による光学式測定において、水晶体が濁っていると光が通りにくく、測定の正確性が失われます。
ストレスフリー療法が今大人気!

ここまで、白内障の治療方法について、以下の4種類を紹介してきました。
- 初期段階…「点眼薬による治療」、「ストレスフリー療法」
- 進行後…「超音波乳化吸引術」、「レーザー白内障手術」
日常生活に支障が出るまで放置して外科手術を受けるよりも、見え方に違和感がある初期段階で病院を受診する方が望ましいです。
ストレスフリー療法は、ここまでで説明してきたように、「治療費」と「治療期間」の点で、点眼薬による治療よりも優れています。また、施術後の注意点もなく、通常の日常生活を送りながら治療を受けることができる点もメリットです。

まとめ

今回は、白内障の治療法について詳しく解説しました。
- 初期段階では、「点眼治療」が基本。白内障の進行抑制が目的。
- 初期段階ならば、温熱療法の一種「ストレスフリー療法」にも期待できる。
- 進行した段階ならば、白濁した水晶体を取り除いて眼内レンズを挿入する手術が必要。従来からの「超音波乳化吸引術」と、最新の「レーザー手術」がある。
- 初期段階の治療費は、手術による治療費よりも安い。その中でも、ストレスフリー療法はトータルでは点眼薬より費用が抑えられる可能性がある。
- 治療期間の目安は、点眼薬で1年以上、ストレスフリー療法で数ヶ月、手術で3ヶ月程度。
- 手術後の注意点は、「洗顔・入浴を控える」、「お酒を控える」、「保護メガネはなるべく外さない」など。
- 白内障を治療しないと、「ぶどう膜炎」や「緑内障発作」のリスクが高まり、適切な眼内レンズの選定が困難になる可能性もある。
- 治療費や治療期間、術後の注意点などの観点から、「ストレスフリー療法」が人気
この記事の情報が、みなさまの治療方法の選択の際にお役に立てれば幸いです。